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その人の持つ志向が、ある方向へと人生を導く
フィリピンの小さな島、「カオハガン島」を買い、オーナーとして、宿泊施設を運営するなどして島で暮らす崎山克彦さん(73歳)。ですが、南の島で暮らすということを、夢見ていたわけではなかったそうです。 「何かをしようと努力したというよりは、いろんなところに分かれ道があって、自然に選択してここまで来たという気がするんですね。大切にしていることや、趣味や志向があれば、自然と行き着くところに行くんじゃないかと思います」 崎山さんの場合、海が好きだという単純な気持ちや志向があったからこそ、現在の人生へと導かれたわけです。 島民たちと信頼関係を築き、ともに暮らし、よりよい未来を描こうと活動を続けていますが、5年後の2012年にはすべてを他の人に引き継いで、一島民として島の片隅で暮らしたいと考えています。 「島民が自立していろいろなことができるようにしたいと思っていて、宿泊施設の運営も、昨年日本の大学を卒業した子が、日本のホテルで研修して帰ってきたら任せたいと思っています。今つくっている漁業保護区も、やがては島民で運営できるようになるでしょう」 また、崎山さんのパートナーである順子さんがキルトの作り方を教え、島の女性たちは独特の表現方法でキルトを作るようになり、地場産業のひとつとして発展してきています。「医療や教育といった社会共通資本というのかな、島民たちが全体で行っている事業に回していきたい」。描く目標は大きいのです。 長く暮らす中で見えてきた、島の本当の魅力
崎山さんと島との出会いは、そこに住む人たちにとってじつに幸福な出会いであったと断言できます。ふと、疑問が浮かびました。崎山さんが買わなかったら、島はどうなっていたのでしょうか。 「それはわからないけれど、まわりに同じような島はいっぱいあって、セブ島で暮らす金持ちが島を経済的に支配しています。でも、キルトづくりは他の島でもやるようになったし、少しずつだけどカオハガンでやっていることが波及している気がします」 島で暮らすようになって17年。本当にその良さがわかってきたのは、最近のことだと、崎山さんは言います。 「ああいうところにいると、創造の主というものを感じるようになるんです。創造の主が、善意でこの島をつくってくれたんだと。私なんかでも感じるんだから、以前から住む島民たちは当然感じている。だから、それを壊しちゃいけない、助け合わなきゃいけない、やってはいけないことはやらない。島民たちにはそんなところがあって、私はそれを『島の文化』と呼んでいます。それを感じるようになったのは本当に最近です」 島民たちに「してあげる」感覚から、こちらが「学ぶ」ことのほうが多くなってきたそうです。それは予想していなかった変化、なのでしょう。 「林住期」をよりよいものにするために
早くに退職し、南の島にステージを移して定年後の人生を謳歌する…誰もがそんな風に生きたいと願うけれど、それが夢のような話であることも私たちは知っています。では、定年後どんな暮らしを目指せばよいのか。崎山さんなら、どんなアドバイスをするでしょうか。 「難しいことだけど、将来の安定をあまり焦って考えないほうがいいんじゃないか。安定を考えることで、かえって不安定になってくるものだから」 崎山さん自身、将来の夢など最初から見えていたわけではありません。ただ、島に移住したとき、意識したことがあります。 ヒンドゥー教の教えには、四つの期があるそうです。学びの時期の「学生期」、家庭を築き、働いて家族を養う「家住期」、家を出て隠遁の暮らしへと変わる「林住期」、そして、この世との絆を断ち切って穏やかな死へと向かう「遊行期」。島に移ってからが、自分にとっての「林住期」になると、崎山さんははっきり意識したそうです。そのため、今までしてきたことを生かしながら、人のためになることをしたいという気持ちを持っていました。 これから林住期を迎える人たちには、「それぞれに経験を培ってこられたわけだから、それを社会に還元していくことだと思います。それは社会にとっても自分にもよいことだし、それによって自分というものが安定する。自分のためというのは、もう考えないほうがいいと思います」 それでも答えが見えなかったり、迷いあぐねたら、崎山さんの住むカオハガン島に行ってみるのも、ひとつの方法ではないでしょうか。日本とはかけ離れた、ゆったりとした時間に身を任せ、海からの風に吹かれる。それだけで、大きな悩みがいつのまにか小さなことに思えてくるかもしれません。知らなかった自分を発見するのも、そういうときです。そして、いくつになっても、そうした発見や、人生が変わる瞬間というのは訪れるものです。 |
カオハガン島公式ウェブサイト「何もなくて豊かな島『カオハガン』」 URL:http://www.caohagan.com/ |
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