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「野菜選びのプロ」が達した結論は、
選ぶ目と選ぶ時を伝えることでした(第1回)

青果店「築地御厨つきじみくりや 」代表 内田悟さん

内田さんの著書『青果店「築地御厨」直伝 野菜の選び方、扱い方。』(マーブルトロン刊)。野菜の目利きになるヒントが満載です。
講義中の内田さん。「トマトの旬は実は3月なんですよ」。興味深い野菜の話が次々と語られていきます。

正しさだけを求めても幸せにはなれない!

立ち寄った書店で偶然手にした『青果店「築地御厨」直伝 野菜の選び方、扱い方。』。その本が、「築地御厨」の内田悟さん(52歳)との出会いをもたらしてくれました。内田さんの本業は、都内のレストランに無肥料無農薬野菜を中心に卸すこと。そのかたわら、野菜の選び方、おいしい食べ方を教える「やさい塾」を開いていると聞けば、食いしん坊なら興味が湧いてくるでしょう。

飛び入りで参加した5月の「やさい塾」。雨降りにもかかわらず、20名以上の人が集まり、狭い室内は熱気にあふれていました。

開口一番、内田さんは、「なぜ、農薬はいけないのでしょうか。なぜ中国野菜はいけないのでしょうか」という問いを投げかけました。答えを見つけようと頭の中はぐるぐる回り出しますが、言葉にできません。そのうちに春キャベツが腐りやすいのはなぜか、肥料と野菜の関係などの話が続き、これまでの「常識」が覆されていきます。

そして、いよいよ試食。まずは実際に食べて、旬を迎えた野菜のおいしさを実感してほしいという内田さんが、2日前から丹精込めて仕込んだ野菜のおいしいこと! 空豆のポタージュに、白ワインヴィネガーに漬けたふきなど、味も彩りも抜群のワンプレート料理をいただきました。砂糖もみりんも一切使わないのに、甘味を感じるのは、野菜の旨みが本物であり、それを生かした調理法をしているからなのでしょうか。

「やさい塾」5月のメニュー。旬の野菜の旨みを生かしたスープと料理。写真上は盛りつけ前のもの。

2時間におよぶ「やさい塾」でしたが、前述の問いかけに対する直接的な答えは最後までありませんでした。なぜだろう。宿題のように、頭の片隅にその問いは引っかかっていました。そして後日のインタビューで、その真意はすぐにわかりました。

「本当は、農薬は駄目だ、添加物は駄目だって言いたいんです。でもね、正しさだけを求めて、幸せになれるでしょうか」。それが、27年間、野菜と付き合ってきた内田さんの信念だったのです。




「おいしいね」は、笑顔が広がる魔法の言葉

野菜は私たちが生きるために欠かせないものだけに、それを巡るビジネスは、巨大で複雑な仕組みを持っています。単純に有機野菜がよくて、農薬を使った野菜はよくないと決めつけてしまうのは簡単ですが、それではスーパーに行って野菜を買うことに躊躇してしまいませんか。内田さんは、それを危惧しているのです。それならば、いい悪いではなくて、「おいしいね」という言葉をもっと大切にして食べる方が、素敵なことが待っている気がしませんか、と話します。そのためのステップとして、野菜を選択できる目を養いましょうと、内田さんは提案しているのです。

けれど、選択するには基準が必要です。内田さん、どう考えたらいいのでしょう?
「僕の解釈はこうです。人間は寒くなったら着込んで、暑くなったら薄着になる。四季の中で私たちは暮らしています。先祖もその中で衣食住を育んできたのですから、季節を感じ、旬のものを食べるようにすれば、間違った選択はしないのではないか。それが、僕の持論です」

内田さんが扱う野菜。旬を迎えたおいしい野菜は見た目にも美しい。野菜の保存法もしっかり教えてくれます。

野菜は、同じものでも時期、生産地が違えば、味は大きく変わってきます。季節の移ろいを感じるアンテナを持って、スーパーの野菜を手に取ってみると、今までとは違った自分だけの選択肢が出てくるかもしれません。

内田さんはこんな面白い話もしてくれました。苦しんで死んだ牛の肉は、食べるとなぜか硬い。アドレナリンが出て、肉を硬くしてしまうようなのですが、野菜も命あるもの。喋らないし、意志もないように見えるけれど、季節の変化の中で生命を維持するために、伝達する何かがあるはずです。それが、おいしいことにつながっていくのかもしれないと言うのです。

そんな野菜の不思議な話と、内田さんの野菜との出会いについて、次回は聞いていきましょう。


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